SFに愛をこめて


SFに愛をこめて
 

                          湯田伸子
     
   
静かな図書室の片すみで、初めて私はSFと出会った…    

私が今までに描いたこまごましたSFマンガを集めて一冊にして下さるというので、嬉しさによく考えもせずに「よろしくお願いします」などと返事してしまった。編集のほうに昔の原稿を渡しはじめてから、しまったと思った。下手な絵だとはわかっていたが、あらためて見直すと想像を絶して下手なのである。まったくひどい絵である。レヴェル以下である出どうして原稿料がもらえたか不思識である。恥ずかしさに七転八倒したが、約束してしまった以上しかたが無い。 「これは昔の私です。今はこれよリうまくなってるはずです」とか何とかもぐもぐ弁解しながら原稿を渡した。どうぞ親愛なる読者の方々よ(もしそこにおられましたら)、私のひどい絵をお許し下さい。私がまさかまさか人並みの絵はかいてるなどと思い上がりながらこれらの恐るべき作品群を描いたのだ、などと思わず に下さいますように。恥ずかしさに消え入らんばかリなのですから。一体こんなひどい絵で何が伝わるのだろうかと思いながら、辺境の惑星の上で写真屋をやってる男の話や、アカシヤの花の咲き乱れる六月の植民地の話を描いたのです。スミマセン。

 SFは好きでSFを、描きたいと思うけれども、メカは描けないしSF向きの血液型ではないし(SF作家にA型の血液型の人はいないというのに、私は何とそのA型!なのである)、SFやめたほうがいいんじゃないというような条件がそろっているのだが、私はどうしてもSFをあきらめられないと思う。

 小さい頃、現代小説というのは誰のペニスが一番固くて長いかとか誰のウァギナが一番ぬれているかとかいうようなことばかり書いてる、いやらしい世界に思えた。文学なんか勝手にいやらしいことやっていれぱいいやという気がして、私はSFばかり読んでいた。SF小説は、いろんな感情を私に教えてくれた。最終戦争で一瞬ネオンのようにまたたく地球を火星の砂漠で見上げる悲しみや、ブラックホールの中に永遠の時間をかけて吸い込まれていく恐怖や……。

どこか遠くの惑星の海辺でタイムジャンプできる小動物が撃たれるのを見たし、金星のバーでひげづらの男達が、得体の知れない女のウワサをしているのを見た。私にもこんな世界のことを描けたらと思った。

 私も年を取り(?)現代文学が昔思ったようなものでは無いとわかってきたが、それでもSFは大好きである。静かな図書室の本棚の上に、まっ黒い竜のような大きな生き物がとぐろを巻いてるような情景を忘れられるものではない。

 血液型こそあいにくSFではないけれども心は大いにSFですので、何とかハンデを克服してSFでいいものを描きたいと思っています。ひどい絵の私のマンガを読んで下さった皆様、どうもありがとうございます自これを一冊にして下さったスタジオイワオの方々も、どうもあリがとうごぎいました。